夏祭りデート

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恋人ができたら、夏祭りの浴衣デートは誰もが憧れるデートシチュエーションだと思う。
それは、私だっておなじ。

夏って、たくさんの「非日常」のイベントがあるから、ワクワクする。
友人と一緒にイベントに繰り出すのだってドキドキするんだから、大好きな彼と一緒にデートなんて、これ以上になく心臓が高鳴る。

付き合い出してもうすぐ1年。初めて一緒に過ごす夏。
この前海に出かけたときは、うっかりペディキュアを塗りなおし忘れてドジしてしまったけれど、優しい彼は笑い飛ばしてくれた。

うん、今日は、大丈夫。

着慣れない浴衣だから、何度も着付けの練習をした。
母は「着物じゃあるまいし」と苦笑いしていたけれど、みっともなく着崩れた姿は彼には見せたくないんだから、きちんと準備しておかないと。

髪をゆるめのシニヨンにして、いざ、夏の夜祭りに出かける。


待ち合わせ場所に着いてすぐに見つけた彼は、甚平姿だったので、ちょっと面食らってしまった。とてもよく似合っていたけれど、照れ隠しで、つい口がとがってしまう。
「もう、浴衣で行こうって行ってたじゃん」

「え!?これ、浴衣じゃないの!?」
素っ頓狂な声を上げて慌てふためく彼。どうやら、男性用の浴衣と甚平が彼の中では同じものという認識だったらしい。

その様子がかわいく思えて、頬を膨らませてみたものの、すぐに笑顔になってしまった。
「似合ってるから、いっか。さ、行こ」
そう言って彼の手を引いて歩きだすと、心なしかいつもよりも鼓動が速くなっているような気がした。


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ぎっしり並ぶ提灯の暖かい朱色が、夏祭りの雰囲気を大いに演出していた。
私の手にはりんご飴。彼の手にはチョコバナナ。
帯にはもらった団扇を指して、並んでゆっくりと屋台に挟まれた通り道を歩いていく。

なんでもないような、小さな事なのに、それだけでとても幸せを感じる。

りんご飴を口に含むと、甘い飴がパリっと弾けて姫りんごの香り高い風味がほのかに酸っぱく、子どもの頃両親にせがんで買ってもらった思い出がよみがえってきた。

「ちょっとひと口」
といって彼がりんご飴にかぶりつく。

「けっこう酸っぱいのな」
そう言って、自分が買ったチョコバナナを齧って、もぐもぐと口を動かしながら、齧りかけのチョコバナナを私に差し出す。

私も少し分けてもらうと、ただただ甘いチョコとバナナの味が口いっぱいに広がった。

なんだか、家族のような距離感になった一瞬を、きっと私は一生忘れない。
そういえば、せがんで買ってもらったりんご飴、よくお父さんがひと口だけ横取りして、怒った私に別のお菓子を買ってくれたっけ。

「なんだか、家族になったみたい」
と、ちょっとだけ勇気を出してそう呟いたのだが、彼の耳には届かなかった。

丁度タイミング悪く、打ち上げ花火のドーンという音がかき消してしまったから。

「え?」
何か言ったらしいと察した彼が聞き返すが、恥ずかしかった私は
「何でもなーい」と声を張り上げて、赤くなりそうな顔を見せまいと、花火に注目させた。

「ほら、花火。すごい!」

夜空に咲く大輪の花に見とれていたら、知らない間に手をつないでいたらしい。
また「家族みたい」と思ったが、声を張り上げてまで言うことじゃないよなぁ、と思ったので、その言葉は一旦胸にしまっておく事にした。

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